うちの会社は大丈夫?ハラスメント危険度セルフチェック20項目

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これまで数多くの中小企業の労務相談に携わってきた経験から、近年、特にハラスメントに関するご相談が急増していることを肌で感じています。

本日は、中小企業の経営者や人事担当者の皆様が、自社のハラスメントリスクを客観的に把握し、より良い職場環境を築くための一助となるべく、「うちの会社は大丈夫?ハラスメント危険度セルフチェック20項目」と題したコラムを執筆いたしました。

ぜひ、最後までお付き合いください。

1.はじめに:その「指導」、本当に大丈夫? 中小企業を揺るがすハラスメントリスク

「これくらいは指導の範囲内だ」
「昔はもっと厳しかった」

経営者や管理職の方から、このような声をお聞きすることがあります。しかし、その認識はもはや通用しない時代になりました。

2022年4月からは、大企業だけでなく中小企業においても、パワーハラスメント防止措置が全面的に義務化されています。 これは、国が「ハラスメントは人権に関わる許されない行為であり、企業が責任をもって対策すべき問題である」という明確な姿勢を示したことに他なりません。

ハラスメントを放置することは、被害者である従業員個人の問題に留まりません。優秀な人材の離職、職場の士気や生産性の低下、そして何より、企業の評判失墜による経営への深刻なダメージに直結します。 対策を怠った場合、厚生労働大臣による助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わなければ企業名を公表される可能性もあります。

ハラスメント対策は、単なる「コスト」や「守りの一手」ではありません。全ての従業員が安心して能力を発揮できる職場環境を整備することは、企業の持続的な成長を支える重要な「投資」なのです。

2.見落としていませんか? ハラスメントの正しい理解

効果的な対策を講じるためには、まずハラスメントを正しく理解することが不可欠です。職場で特に問題となりやすい代表的なハラスメントを確認しましょう。

パワーハラスメント(パワハラ)

職場におけるパワハラとは、①優越的な関係を背景とした言動で、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、という3つの要素を全て満たすものを指します。 具体的には、以下の6つの類型が例として挙げられています。

身体的な攻撃:殴る、蹴る、物を投げつけるなど
精神的な攻撃:人格を否定するような発言、大声での威圧的な叱責など
人間関係からの切り離し:無視、仲間外れにする、別室に隔離するなど
過大な要求:到底対応できない量の業務を命じる、不要な雑用を強制するなど
過小な要求:能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事しか与えないなど
個の侵害:プライベートなことに過度に立ち入る、個人情報を本人の許可なく暴露するなど

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

職場における性的な言動により、他の労働者に不利益を与えたり、就業環境を害したりすることです。 これには、性的な関係を強要する「対価型」と、性的な言動で職場環境を不快にする「環境型」があります。

マタニティハラスメント(マタハラ)など

妊娠・出産、育児休業等の制度利用に関する言動により、女性労働者の就業環境が害されることを指します。 男性の育児休業取得に対する嫌がらせ(パタニティハラスメント)も同様に許されません。

近年では、顧客からの著しい迷惑行為である「カスタマーハラスメント」や、リモートワークに伴う「リモートハラスメント」など、ハラスメントの形も多様化しています。

3.【診断】ハラスメント危険度セルフチェックリスト20

それでは、皆様の会社の現状をチェックしてみましょう。
以下の20項目について、「はい」「いいえ」で正直に答えてみてください。

第1章:経営層・管理職の意識・行動チェック(5項目)

1.経営トップが「いかなるハラスメントも許さない」という方針を明確に従業員に示しているか

解説:トップの強いメッセージは、ハラスメント防止の基盤となります。 朝礼や社内報、社内掲示などで繰り返し発信することが重要です。

2.管理職は、「指導」と「パワハラ」の客観的な境界線を理解しているか

解説:業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導はパワハラには該当しません。 しかし、その線引きを学ぶ機会(研修など)がなければ、認識にズレが生じがちです。

3.経営層やベテラン社員の中に「昔はこれが当たり前だった」という考えが根付いていないか

解説:時代の変化とともに、職場における規範も変わります。過去の価値観で現在の問題を軽視することは、リスクの芽を育てることになります。

4.部下に対して、飲み会への参加を執拗に勧めたり、プライベートな予定を根掘り葉掘り聞いたりする管理職はいないか

解説:これは「個の侵害」に繋がりかねない危険な行為です。従業員間のコミュニケーションは重要ですが、節度を守る必要があります。

5.特定の従業員に対し、他の従業員の前で大声で叱責したり、人格を否定したりするような光景が日常的に見られないか

解説:「精神的な攻撃」に該当する典型的なパワハラです。指導は、あくまで本人の成長を促す目的で、人目につかない場所で行うのが原則です。

第2章:職場環境・風土チェック(5項目)

6.若手や新人が、上司や先輩に対して意見や質問をしにくい雰囲気はないか

解説:心理的安全性の低い職場は、ハラスメントの温床となりやすい環境です。風通しの良いコミュニケーションが予防に繋がります。

7.恒常的な長時間労働や、休日出勤が当たり前の部署はないか

解説:心身の疲労は、従業員の視野を狭め、攻撃的な言動を引き起こす一因となります。働き方改革はハラスメント対策とも密接に関連します。

8.特定の従業員だけを飲み会や社内イベントに誘わない、挨拶をしても無視するといった行為はないか

解説:「人間関係からの切り離し」という、陰湿ないじめのサインかもしれません。

9.性的な冗談を言ったり、容姿や年齢についてからかったりすることが許容される空気はないか

解説:たとえ悪気がなくても、相手が不快に感じればセクハラになり得ます。 従業員一人ひとりの意識改革が必要です。

10.「この仕事は男性(女性)の仕事だ」といった、性別による固定的な役割分担の意識はないか

解説:こうしたジェンダー・バイアスは、セクハラやマタハラの背景にある根深い問題です。

第3章:相談体制の整備チェック(5項目)

11.ハラスメントに関する相談窓口を設置し、その存在を全従業員に周知しているか

解説:相談窓口の設置は、法律で定められた企業の義務です。 周知されていなければ、存在しないのと同じです。

12.相談したことによって、解雇や異動などの不利益な扱いを受けないと就業規則等で保証されているか

解説:相談者が安心して声を上げられる環境を作ることが極めて重要です。 相談を理由とする不利益な取り扱いは、法律で明確に禁止されています。

13.相談窓口の担当者は、プライバシー保護の重要性を理解し、適切に対応できる知識やスキルを持っているか

解説:担当者には高度な対応が求められます。 定期的な研修やマニュアルの整備が必要です。

14.社内の担当者だけでなく、弁護士や社会保険労務士など、外部の専門家へ相談できる窓口も用意しているか

解説:社内の人間には相談しにくいケースもあります。 外部窓口の設置は、相談体制の実効性を高める上で非常に有効です。

15.相談があった後、事実関係を迅速かつ正確に調査し、公平に対応する仕組み(フロー)が確立されているか

解説:相談後の対応のまずさが、問題をさらに深刻化させることがあります。 事前のルール作りが不可欠です。

第4章:予防・再発防止策チェック(5項目)

16.管理職向け、一般社員向けなど、階層別のハラスメント研修を定期的に(年1回以上)実施しているか

解説:研修の実施は法律上の義務ではありませんが、ハラスメント防止措置を講じる上で事実上不可欠な取り組みとされています。

17.就業規則に、ハラスメントの禁止と、行為者に対する懲戒処分について明確に規定しているか

解説:ハラスメントは許されない行為であることをルールとして明文化し、周知・啓発することが企業の義務です。

18.実際にハラスメントが発生した際、就業規則に基づいて行為者へ厳正な処分を行っているか

解説:問題を曖昧に済ませてしまうと、「この会社はハラスメントを容認する」という誤ったメッセージを社内に発信することになります。

19.問題が発生した後、当事者への謝罪だけで終わらせず、具体的な再発防止策を講じているか

解説:職場環境の改善や配置転換、研修の追加実施など、組織として再発防止に取り組む姿勢が求められます。

20.定期的な従業員アンケートなどで、ハラスメントの実態や職場の問題点を把握する努力をしているか

解説:潜在的なリスクを早期に発見し、予防策を講じるための重要な取り組みです。

4.診断結果から見る、今すぐ着手すべきこと

「はい」と答えられた項目は何個ありましたか?

「はい」が16個以上:【危険度:低】

素晴らしいです。ハラスメントに対する意識が高く、体制も整っている状態と言えるでしょう。しかし、油断は禁物です。現在の取り組みを継続し、制度が形骸化しないよう定期的な見直しを行いましょう。

「はい」が8~15個:【危険度:中】

要注意レベルです。ハラスメント防止の意識はあるものの、いくつかの課題や弱点が見受けられます。「いいえ」と答えた項目を中心に、何が不足しているのかを具体的に洗い出し、優先順位をつけて改善計画を策定・実行する必要があります。

「はい」が7個以下:【危険度:高】

危険な状態です。ハラスメントが発生するリスクが非常に高く、既に潜在的な問題が起きている可能性も否定できません。放置すれば、近いうちに深刻なトラブルに発展しかねません。早急に、そして抜本的な対策に着手する必要があります。一人で抱え込まず、直ちに社労士・弁護士などの外部専門家へ相談することを強くお勧めします。

5.まとめ:ハラスメント対策は、会社を守り、成長を加速させる「投資」である

ハラスメント問題は、一度発生するとその対応に多大な時間と労力、そして費用を要します。最も効果的で、かつ最も低コストな対策は「予防」に他なりません。

そして、その鍵を握るのは、経営者の皆様の強いリーダーシップです。

私たちの会社は、いかなるハラスメントも絶対に許さない」という断固たる姿勢を示し、具体的な行動に移すこと。それこそが、従業員が安心して働ける健全な職場風土を創り上げるための第一歩です。

今回のセルフチェックで課題が見つかったとしても、決して悲観する必要はありません。それは、会社がより良く変わるための伸びしろです。何から手をつけて良いか分からない、就業規則の見直し方が分からない、相談窓口の設置方法に悩んでいるなど、少しでも不安を感じたら、私たちのような労務問題に詳しい社労士・弁護士などの専門家を頼ってください。

皆様の会社が、従業員にとって最高の職場となり、さらなる成長を遂げられるよう、全力でサポートさせていただきます。

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